漆・永守紋子×木版画・杉本奈奈重《空(くう)を手繰り、私は灯す》2025.11/7(Fri)-11/23(Sun)
漆・永守紋子×木版画・杉本奈奈重
《空を手繰り、私は灯す》
Ayako Nagamori × Nanae Sugimoto
Two-person Exhibition
“We all still have a long way to go”
会期|2025年11月7日(金) -11月23日(日)
休廊|11月13・20日(木)
※アーティストトーク 11月8日(土)14:00〜
OPEN | 12:00-18:00
この企画で出会うまで互いに接点のなかった両者ですが、二人の繊細な作品が互いに響き合う空間を見いだすべく何度も対話を重ねました。
工芸とファインアートの垣根を越えて目指すものの共通点を探ります。
会期初めにアーティストトークも行います。 この機会にぜひご高覧ください。
・・・
Statement
静寂な夜に耳を澄ますように 何もないと思えるところからイメージの源をたぐりよせる。 この二人の作品にに共通するのはささやき声のような気配である。
永守の漆平面作品は一見して何も描いていないように見える。しかし紫外線に触れ時間を経ることによって、漆の上層が透けて下層の図像が可視状態に近づいてくる。それまでには数年かかるような「漆の時間」は、人間の時間軸とは全く異なる位相にある。
杉本の木版画はコントラストの強い輪郭線はすくなく、背景に溶け込み、意識と身体の境界を曖昧にするようである。 画面に目をやると、淡く繊細なグラデーション、顔料の色、版の重なり、和紙の繊維、さらにその奥へと引き込まれる。
見えるものの奥に潜む、見えないもの。
それは、永守の漆の層の奥に潜む絵の気配であり、杉本の木版画の余白に漂う存在の気配でもある。
共に樹木から生まれるそれらは自然現象の痕跡であり、命の記憶のかけら。
作家はそれらの記憶を手繰り、見えないものにかたちを与える灯りをともす。
目指す地点までは未だ道半ば。
永守紋子
《風をえがく》
呂色 色溜め
45×45 (㎝)
2022
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
永守紋子
《LISTEN TO THE SILENCE.》
呂色 蒔絵 螺鈿
6×6×11 (㎝)
2024
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
杉本奈奈重
《私の中に眠る自然/The Nature Sleeping in My Body》
木版画、和紙、水性絵具
Woodblock print, water color on washi paper
97×67 (cm)
2018
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
杉本奈奈重
《A Study of Light》 木版画、和紙、水性絵具
Woodblock print, water color on washi paper
97×67 (cm)
2016
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
永守紋子|NAGAMORI Ayako
1983年 神奈川県鎌倉市に生まれ、のち兵庫県へ転居
2005年 京都市立芸術大学美術学部工芸科漆工専攻卒業
2008年 金沢卯辰山工芸工房漆芸工房修了
漆は茶褐色の透明な樹液ですが、紫外線にあたると透明度が増す性質があります。 それは漆の弱点だと言われていますが、私の作品はその性質を生かした作品です。 水が溜まったように見える底の部分には、何層にもなった漆の層の各層に葉っぱが描かれており、上の層の 葉っぱと下の層の葉っぱには遠近感があります。しかし、時間が経つにつれ見えてくる葉っぱが増え、まるで水が 透き通るように鮮明になります。年月を経て今まで見えなかった葉が現れる変化を楽しむことができます。 One of the commonly known flaws of lacquer sap is its tendency to turn transparent, from its original amber, when exposed to UV light. My work pieces utilize this nature and turn the flaw of lacquer into an expression technique. The flat bottom surface of the piece is coated with numerous layers of lacquer, with leaves drawn into each and every layer. As the piece ages and the amber layers become transparent, like the impurities of pond water slowly precipitating, the bottom surface turns into clear water-like texture, giving the visual effect of as though the drifted leaves of the past, gradually re-appearing from deep underwater.
主な個展
2025年 「ひかり きらり 光る」(日本橋高島屋美術工芸サロン)東京
‘ 23 (横浜髙島屋美術画廊)神奈川 巡回展
「あるかなしかの風」(GALERIE CENTENNIAL)大阪・2011年より毎年
2024年 「みえる?」(京都髙島屋美術工芸サロン)京都
「あらら、花咲く」(art space morgenrot)東京 ’22 ’20
2018年 The Allule of Urushi By Ayako Nagamori (The GALLERY by SOIL) 香港
主なグループ展
2025年 「ハンドストーリー 現代の手技 増田敏也 河崎海斗 永守紋子 三人展」(福山天満屋)広島 2024年 「工芸のその先へ -Kogei Ahead」(京都髙島屋美術画廊) KOGEI Art Fair Kanazawa(Hyatt Centric Kanazawa)石川 '25
2020年 「漆ウルトラ」展(高島屋美術画廊 日本橋店 京都店 大阪店)
2014年 The stories from fingertips, Talking with eating tools. (Vogoze) ソウル、韓国
杉本奈奈重|SUGIMOTO Nanae
1991年 京都市生まれ
2023年 京都精華大学博士後期課修了 博士(芸術)
1991 Born in 1991
2023 D.Arts, Kyoto Seika University
自身の身体感覚やその変化を起点に、おぼろげだがたしかに存在し、関係し合うもののありさまに関心を寄せる。木版画のぼかし摺り技法で、事物の間にある微妙な階調を目に見えるようにする。 Starting from her own bodily sensations and the changes therein, Nanae is interested in reflecting the indistinct symbiosis of things that dimly exist. Using the traditional gradation technique of Japanese woodblock printing, her aim is to visualize the tone which sublily lies in between things.
主な個展
2025 「隣室のお化け」+1art/大阪
2024 ギャラリー恵風/京都 同 ’22, ‘17
O gallery/東京 同’21, ’17, ’16, ’15
主なグループ展
2024 「夢ではない」+1art/大阪
2024 「京都府新鋭選抜展」京都文化博物館
2018 「夏冬」Gallery OUT of PLACE/東京 主な受賞歴
2017 「京都府新鋭選抜展」アンスティチュフランセ関西賞
2016 「全国大学版画展」収蔵賞, 同’15, ‘14 2014 「京展」館長奨励賞
2013 「アワガミ国際ミニプリント展」準大賞
主なパブリックコレクション
佐久市立近代美術館 油井一二記念館(長野)
町田市立国際版画美術館(東京)
コメント
世界が秘めている無数の可能性を木版画のぼかし摺りに託せないだろうか。 葉が落ちて枝だけになった木を見ると人の体の内部を連想する。木と身体には共通するかたち があると気づくとき、ふだん意識しないことにも関心が向く。 身近な存在のことはわかっているつもりになるが、視点を変えれば予想外のすがたになる。見えなくなっても、かたち、すがた、色を変えてあなたと繋がっているはず。